予選突破とカミソリ研磨

30年前の理容学校は、カミソリ研磨と言う実技科目がありました。カミソリを砥石にゴシゴシこすりつけて、切れ味のいい刃を付けるんです。刃物のいろはを基礎から身に付けることは、良い職人になるための必要条件なんですよ。

あ、現在はカートリッジ式になっていて、研磨の必要はなく常に良い切れ味ですよ。

 

 

最初はクラス全員が初心者。言われたとおりにやってるだけですが、徐々に個人差が出ますね。研磨の実技の日、納得いかなかったら家で研ぎ直してくる生徒、そのままの生徒。元来、僕は自分で器用だと思ってたんですが、これがちっともうまくいかない。自分に腹が立ってきて、家で研ぎまくってました。

 

一学期の中間テスト。研磨テストの前夜に、どうしても納得いく刃が乗らなくて、深夜まで5時間研いで、それでも乗らず、涙出てきたのを覚えています。テストは先生に見せるだけです。「良い刃は乗ってないけど、これだけやった努力はわかる」と及第でした。研ぎまくった刃は誰のよりも小さく減ってたんです。

 

甲斐あってコツをつかみ、期末テストの頃にはクラスで一番の研磨師だったと思います。期末テスト前日。仕上がり具合を先生に最終チェックしてもらったら「うん。この刃やったらテストは合格!」と言っていただきました。

翌日の期末テストで先生に見せた時の先生の言葉がいまだに忘れられません。

「これ、昨日の夜家で研いでないやろ?」

「はい。昨日のままです」

「刃は合格やけど、その精神が気に入らん」

 

合格するために研磨をしてたんじゃないんですよね。良い職人になるために自分自身を研磨していたんですよ。

なのに、「合格の刃が乗ってるんだから、今日は研がなくていい」って思っていたあの時の心の中を、先生に見通されましたね。刃を見たら、夕べ研いだかどうかくらいお見通しなんですから。

 

「予選突破できるんだから、この試合は負けのままでいい」予選突破だけが目標だったんでしょうか。

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